きちんと〝理解する〟読書法あれこれメモ

2017年7月15日

 ずいぶんと古いものなのだが、togetterで面白いまとめを見つけた。大変有益なまとめだが、理解を深める読書法について過去に読んだ本とリンクすることがあり、自分への備忘メモとしてまとめておきたい。

takey_y さんの「数学書の読み方」 – togetter

『日常に活かす数学的思考法』http://t.co/O8bZaoi の著者 @takey_y さんによる、数学書の読み方、数学を勉強するときのノートの作り方。数学以外の(ちょっと難しいと感じる)科目にも応用可能と思われます。こういう骨の折れる作業を怠る人、怠らない人。これが数学や物理学を好きになるかならないかの分岐点です。

 このまとめでは、数学書を例に挙げて、内容を血肉とするにはいかにして本を読むべきか論じている。ごく簡単にまとめると、ノートに自分の手で書き写すなど、書かれている内容を一つ一つ、何らかの実作業的方法で確実に理解するという作業の繰り返しが不可欠だということだ。決して理解した「つもり」になってはいけない。きちんと自分の頭で理解したことを確認する。その結果、1冊の本を読むのに1年くらいかかっても仕方がないよ、としている。その通りだと思う。以前に速読をテーマにして書いた記事でも考えたことだが、本を読むという営みはどうしても時間がかかる。このまとめにある言葉を借りると「本というのは、本気で読むと、絶対に時間がかかります」。

 ところで、書かれている内容を直接書き写さずに、一旦頭の中にいれて書き出すという高度な方法が紹介されている。これは理工系だけでなく、〝文系〟でも使える方法だが…。

蛇足ながら: 本を読んでそれをノートに書く際に,本を閉じてから書く,というひねりで難易度がちょっと上がります.左手を本の表紙の下にいれ,本の左ページ上部を持つようにして読み,ノートに書くときは閉じる.そして,案外書けない 😉

— Iwao KIMURA (@iwaokimura) 2010年5月11日

一旦,頭のバッファに入れてから,バッファ内の内容をノートにダンプ.

— Iwao KIMURA (@iwaokimura) 2010年5月11日

@iwaokimura @hyuki コメントありがとうございます。「読んだ内容をいったん暗記する」方法は、「デカルトの精神と代数幾何」の冒頭で、飯高先生が紹介されています。学生時代の僕は、そこまでハイレベルなことはできませんでした(爆

— takey_y (@takey_y) 2010年5月11日

 過去に松岡正剛著「多読術」を紹介したが、これと似た読書法を紹介している個所があるのを思い出した。

 ―セイゴオさんが参考にした誰かの読書法って、あるんですか。

 いろいろありますが、いちばん大きな影響を受けたのは「江戸の私塾」の読書法ですね。(中略)
 ぼくが最も感動して真似したのは、兵庫県の但馬(たじま)の「青谿書院(せいけいしょいん)」を開いた池田草庵(そうあん)の方法ですね。但馬聖人とよばれた。のちに吉田松陰が真似をするのですが、二つありまして、ひとつは「掩巻(えんかん)」というもので、これは書物を少し読み進んだら、そこでいったん本を閉じて、その内容を追想し、アタマの中ですぐにトレースしていくという方法です。これはいまでもぼくもときどき実践しています。おススメします。(p.129)

 もしかしたら、先のツイートの元ネタの一つはこの「掩巻」なのかもしれないかな、と。

 この「掩巻」だが、実際にやってみると脳に非常に負担がかかる読み方であることが体感的に分かる。ノートに書き写すというような作業がなくても、脳内でトレースをするだけでも脳のエネルギーを消費するのが実感できる。裏返すと、いかに分かったつもりで読書をしていたかという、自分の読書への甘さを突きつけられる。

 そして、最初に紹介したまとめに戻るのだが、結局のところ、本に本気で向き合って読み始めると、どうしても時間と手間はかかるということだ。しかし、それによって得るものは「つもり」で読むのに比べて格段に血肉となるはずだ。

 ちなみに「多読術」の引用には続きがある。

 もうひとつは「慎独(しんどく)」で、読書した内容をひとり占めしないというもの、必ず他人に提供せよという方法です。独善や独占を慎むということ。これにもぼくは感動して、なるべく実践してきたと思いますね。「千夜千冊」を無料公開したのも、そこから出てます。(p.130)

 このブログもそういうのが実践できればいいのだけど、自分はまだ未熟としか…。

参考リンク

青谿書院 – やぶ市観光協会(兵庫県養父市)
池田草庵 – 但馬の百科事典

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