コスト削減策とは経営と現場の認識差がない組織づくり:村井哲之「コピー用紙の裏は使うな! コスト削減の真実」
2014年4月30日
2007年発行。朝日新書。
会社で働いている人の多くは、タイトルにある「コピー用紙の裏側を使う」というコスト削減策に心当たりがあるはず。ぼくも大いに心当たりがある。コピーで使う用紙削減を目的とした策だろうが、果たしてこれに効果が見込めるのかどうか。面倒くさいと思いつつも裏紙でコピーをしていた記憶がある。
この本では、そのような安易なコスト削減策を誤解や迷信、思いこみが多いとして効果が期待できないとする。そして、本当に効果を期待できるコスト削減策を具体的に指南する。
また、この本が呼びかけるのは細々としたコスト削減策だけではない。本当に強い組織をつくるには、コスト削減策を通して経営と現場の意識のずれを正すことだと主張する。逆に言うと、思いつきで始めた小手先だけのコスト削減策では、組織がかえって弱体化してしまうのだ。コスト削減の議論を通して、本当に収益をあげられる組織とはどんな組織かを明らかにしているところが面白い。
思い出してみるとコピー用紙を二度も使ったり、電気代削減として薄暗い部屋で仕事したりすると、確かにどうにもこうにも気が滅入る。別にもっと効果的なことがあるのではと考えてしまう。実際にこの本でも、そのような削減策はネガティブな思いを現場に与えてしまうとしている。
ではどうすればいいか。経営陣はまず出費の現状把握にしっかり取り組み、本当に引き締めなければならない部分は何かを厳密に見つけだすべきとしている。つまり、思いこみや迷信などでないコスト削減個所をちゃんと見つけろということだ。
そしてそれを実践に移す。その際にはきちんと現場に対して説明する必要がある。押しつけでは決して現場は動かない。ただでさえ普段の仕事で忙しい。その上にコスト削減を強いられた日には、誰も本腰を入れて協力してくれないのは目に見えている。そこで著者は「経営と現場の意識のずれ」を正す必要があるとする。つまり、経営側だけでなく現場もきちんとコスト削減の必要性を認識してもらわなければならない。そのためには、具体的に協力をしてもらうための経営上の数字など具体的証拠を示さなければならない。情報の共有化だ。このためにも、思いこみや迷信でないコスト削減個所のあぶり出しが大前提となる。
それだけでなく、本書では現場こそコスト削減のアイデアを持っているはずだとして、どんどんと削減策を現場に任せるべきだとしている。確かに「これはいらないのでは」「あれはもっと減らせる」というような思いは現場にこそあるはず。それを汲み上げた上で、対応を任せてしまう。そんな経営と現場の関係性がコスト削減には大切だということだ。
公共料金の契約見直しなど具体的なコスト削減の紹介もあるが、やはりこの本で面白いのはこういった経営と現場の意識の乖離をいかに少なくするかという点だろう。そして、それが実現できている組織はコスト削減面だけでなく全般的に強い。経営と現場という立場の差を問わず、みんなそろって効率的で強い組織を目指しているのだから当然ではある。しかし、それに気がついていない人が多い。だからこそ、コスト削減を通してそんな意識の乖離を少なくして、強い組織をつくっていこうというのがこの本の主たるテーマだ。コスト削減だけでなく、強い組織とは何かを改めて考えさせる本と言える。