ノート上で見つける悩みの最適解:岡田斗司夫「あなたを天才にするスマートノート」
2014年4月3日
2011年発行。
〝オタキング〟であり「レコーディングダイエット」の発案者でもある岡田氏が導き出したノート術を紹介している。
ノート術を扱った本はたくさんあるが、この本は従来の効率面を求めるノート術ではない。速効性はないかもしれないが、考え方が身につく思考法そのものを大きく変える手法ではないだろうか。
もともとぼくもノートにいろいろと記録する習慣があった。しかし、あくまで備忘録や物事の整理といった事務的な使い方に限られていた。ノートを使って考えるという発想はなかったのだ。それだけに面白く読めた。
本書は大きく2つの文脈がある。1つはノートに行動を記録する効用。もう1つは論理的に考えるこつだ。
前者は「レコーディングダイエット」と同じだ。著者自身も引用して主張している。
まずはノート術の導入として、1行5項目の簡単な日記をつけることを勧めている。そして、行動を採点する。それによって低い点数の行動を自然と避けるようになるという。これは「レコーディングダイエット」とまったく同じだ。
面倒くさいかもしれないが、こまめにつけられた記録は実に冷静で客観的に現実を突きつける。そこには根拠の薄い精神論はない。そんな現実的記録にせいで、勝手に自分の行動が変わっていく。もちろん、いい方向に。
従来のノート術というと、何か目標を書いてそれを達成するという精神論に陥りがちだ。しかし、それではちょっとつまずくとイヤな思いが自分に返ってくる。そうなると続かなくなるし、いつまでも前に進めなくなる。
この辺は「レコーディングダイエット」と同じく、成果を望まずに記録することで、きちんと現実と向き合うことができる。発想の転換だ。自分をきちんと客観視できるのが、精神論ありきのノート術とは違うところ。何より楽なのは確かだ。
さて、2つの文脈の後者は「論理的に考えるこつ」。
こちらもいろいろな本があるが、本書で挙げられているポイントはやはり「ノートに書くこと」だ。
頭の中で「うーん」と悩むだけでなく、ノートに書いてしまう。何でもないことかもしれないが実は大きい。ノートに書くということは、頭の中のモヤモヤを言語化しなければならない。そこで1回まとめ作業が行われる。著者はこう書いている。
これを毎日繰り返すと、普段の自分が実は「考えている」のではなく、単に「感じている」のだということがわかります。
(中略)
まず「感じる」。次に「感じた理由を考える」。
私たちは感じているだけで、実は考えていない場合が多い。考えを言語化していません。
そのためにも自分の感覚や感情を日本語にする訓練をしてみてください。(pp.102-103)
ここにこそあえてノートに書き出す効用がある。まずは自分の言葉にすることが大きいのだ。
そして、それに対して「なぜ?」「ということは?」という問いをノート上で繰り広げることで結論や答えに近付くことができる。
これは1つ目の文脈とした「レコーディングダイエット」の手法から得られる効用と結びつくと、さらに思考は加速する。
もしノートに書いたのが自分の悩みであれば、レコーディングによって得られた誇張のない現実と、ノートに書かれた「感じていること」を基に、初めてきちんと悩みについて「考えること」ができるのだ。この瞬間に、ノート上で自分のおかれている現実と悩みに向き合える。いわば、悩みを解決するスタートラインだ。ぼくたちはこれまで何だかんだ言って、このスタートラインにすら立てていなかったのが分かる。
また、「どうすればいいか」ではなく「なぜ?」を繰り返すことで答えは見えてくるとしている。確かに「どうすればいいか」だけを探ると、場合によっては現実的でない答えになってしまう。理想や願望にとどまってしまい、今おかれている現実とは離れてしまう。それだけに「なぜ?」や「ということは?」という現実的な問いの繰り返しは大切だ。
本書は「あなたを天才にする」という大きな題名だけれど、天才にならなくてもいい。ノート上で冷静に考えることで、頭の中だけでは導き出せなかった最適解に近づけるだけでも大きな収穫だ。
必ずしも本書にあるようなノート展開をしなくてもいいとは思う。しかし、2つの文脈を中心とした論理展開の方法は役に立つ局面は多そうだ。それだけに、本書の考え方は触れておいて損はないと思う。