タモリの「反省はしない」論からぼくらが学べることはあるだろうか

2014年4月3日

 フジテレビ「笑っていいとも!」が32年という歴史に幕を下ろした。録画を改めて観てタモリさんってすごいなあと思い、あのような生き方を尊敬してしまう。「いいとも」に限らず「タモリ倶楽部」などほかの番組でもそうだが、力を入れないスタイルでありながらあの確固たる存在があるのは、積み重ねとタモリさん自身の人柄なんじゃなかろうかと感じる。

 タモリさんはことあるごとに長続きの秘けつについて「反省をしない」と述べているのは有名な話だ。別の番組では「番組を長続きさせようと思うなら、反省会開くな」(YouTube)と断言している。確かに反省をすると、自分の不十分なところや間違い、能力の無さなどネガティブなところに「しか」目がいかない。

 とはいえ、30代で芸能界入りしていきなりお昼の顔として番組MCを務めるには、いろいろと直面した問題はあったはずだ。しかし、タモリさんの口からそれが語られることはないだろう。おそらく多くの苦い経験があると思われるが…。

 テレビ局や芸能界の事情もあるだろうが、そんなタモリさんのあの仕事スタイルがあってこそ32年間続けることができたのは間違いないと思う。仕事スタイルがそのまま番組のスタイルだろうと感じるからだ。

 あれだけ長続きするためには、視聴者や出演者、スタッフから支持がなければいけない。その源泉は一体なんだったのだろうとぼんやりと考えてみた。

 それは「反省」ではなく「感謝」だったのではないだろうか。タモリさんという人は、「反省」は絶対にしないけど「感謝」だけは欠かさず忘れないという人なのではと思うのだ。

 「笑っていいとも!グランドフィナーレ感謝の超特大号」の最後のあいさつ内容もそうだが、放送の最後で「感謝します」で締めたのが象徴的。もちろん勝手な推測だが、タモリさんは「感謝」することで苦境を乗り切り、そして幅広い支持を得てきたのではないかと思う。

 カウンセリング心理学の分野で「内観法」というのがある。これは、「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」の3点を思い出して自分の生き方を考え直していくという手法だ。たまたま読んだ國分康孝著「『なりたい自分』になる心理学」という本で知った。

 反省ばかりすると、自分の負の面ばかりがクローズアップされてしまう。受け取り方が後ろ向きであり、気分も滅入る。一方、感謝だとどうだろうか。自分の能力の無さで何か過ちをしても「迷惑をかけた」と考えると相手の存在が浮かび上がる。すると受容されている自分の姿も浮かび上がり「ありがたい」と思えるようになる。感謝できるようになるのだ。

 これは精神衛生的にいい。

 反省会ばかり開いて反省するべきことを探す能力があれば、感謝すべきことがないようなところでも感謝することはできる。感謝することで自分自身を前向きにクリエイトするというのがこの「内観法」だと思う。

 タモリさんは反省をせず、「感謝」の気持ちで日々を過ごしていたのではないか。もしかすると無理やりにでもそういう気持ちをつくっていたのではないかとも思う。番組の中でハプニングがあっても、それは番組が面白くなるということなので十分に感謝できる要素だ。共演者やスタッフを怒る必要はなく、むしろ感謝すべきことと言える。そういうスタンスでいれば、何があってもストレスにならず、それでこそ32年も自分のスタイルを通すことができたのだろう。なにより、その考え方の方が自分がラクだ。

 そういったスタイルは、明らかに周囲にもいい影響をもたらす。感謝の気持ちがあれば寛容や気遣いの気持ちが出てくる。それがタモリさんの人柄であり、それが周囲に伝わって和気あいあいとした番組づくりができたのではないだろうか。そして、それがタモリさんへの支持につながる。

 もしかすると「いいとも」という番組はタモリという人物を中心に、そういったいい循環があったのではないかと推測している。だから長続きした。

 とはいえ、これらは勝手な推測の域をもちろん出ないわけだが、「肩書きは〝タモリ〟」としか表現できない存在感はそういった人柄にあるのは確かだろう。その神髄を知りたいと思うし、何よりあこがれる生き方だと思う。

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