長い目で見れば「全滅」への一本道か まとめブログ問題について考えた
2013年8月22日
とある 2ch まとめブログが転載を引用と強弁している事例 – Life like a clown
2ちゃんねるまとめブログはとても好きで、いくつかをいつもチェックしている。そんな中、やはり気になってくるのは転載に関する問題だ。
2ちゃんねるまとめブログ「保守速報」と信濃毎日新聞社(長野県)とのやりとりについては、ぼくも気になっていたのでチェックしていたのだが、それに違和感を覚えたのはどうやらぼくだけでなかったみたいだ。詳しいやりとりと引用に関する意見の相違は、上記ブログを一読するばすぐ分かるのでご参照を。個人的にはどのような形で解決してもいいかなあと思っている。もっとも、解決するのかどうかわからないけど。
さて、2ちゃんねるまとめブログは極端な例だけれども、新聞や放送各社が莫大なコストを投じて世に送り出したコンテンツが、ネット上に無断転載されるのはもう珍しくない。2ちゃんねるまとめブログもそうだし、動画や音声素材がYouTubeやニコニコ動画にアップされるのもそうだ。
ちょうど山本一郎著「ネットビジネスの終わり」(2009年、PHP研究所)を読み終えたところだったのだが、本書の中にネット隆盛時代における新聞・雑誌業界の苦境に関する記述があり、今回の一件とも重なる部分があり興味深く感じた。
新聞・出版業界の苦境は、それぞれの業界内部の事情もあり一概には言えないが、やはりネットの影響は小さくない。上述のように、コンテンツをネットに無断で流されてそれに対する対価が払われていないというのが大きい。山本氏はこう書いている。
ウェブでの記事展開に限定して言うならば、新聞社や出版社は情報革命の名の下にその売り物である記事を勝手にネットで複製され、タダで読まれ、質の低い記事と煽りタイトルによる読者競争に巻き込まれ、無料でウェブサイトを開設して自らも無料で記事を提供しなければならない不利な競争に追い込まれた、ということに他ならない。(p.95)
(前略)社会的使命を果たすために高給の新聞記者が日夜駈けずり回って執筆している新聞記事は、その質の高低とは関係なしにタダ同然の安値でウェブ関連企業の事業拡張の撒き餌として使われているわけだ。(p.100)
これはポータルサイトなどがニュースを使ってアクセスとユーザーを招き寄せ、別のサービスでマネタイズするという構図を指しているのだが、いわゆる「まとめサイト」も同じ商法といえる。問題なのは「引用なのか転載なのか」という法的な部分だが、きちんとニュースを買っているポータルサイトはともかく、ほかのサイトはどうなのかという点だ。最初に挙げた2ちゃんねるまとめサイトの問題が出てくる。要はルールぎりぎり、あるいは明らかに法律を無視したフリーライダーであるということだ。
しかし、このようなネットの自由を重視する文化を否定してはいけない。このような風土があるからこそ、文化発展につながる。とはいえ、これは程度の問題になってしまうのだが、コンテンツを作る側に正しい形でお金が流れないという構図は長期的に見るといろいろと問題がある。
極端な仮定だが、コンテンツを作る新聞や雑誌に正しい形でお金が流れなければ、各社経営に窮してつぶれてしまうかもしれない。そうなれば、そもそもフリーライダーに供給されるはずのコンテンツも途絶えてしまう。これに対してネットメディアが代替するという考え方もあるが、こちらも人が現場に出てコンテンツを作るわけであってやはり正しいお金の流れは不可欠と言える。特にニュース素材は机の上だけで収集はできない。現場に出なければいけないからだ。
山本氏はこう書いている。
この行き過ぎた資本主義のメカニズムは、ネット社会においては逆に情報共産主義とも言うべきジレンマを引き起こす。サービス側が顧客から金を取らずに、無料で有料なサービスを次々と提供していった結果、本来なら情報を生成するのに必要な対価をユーザーが支払わないまま、「ネットの情報は無料で全員に共有されるべき」という共産主義的で反拝金主義の風潮が蔓延していったのである。(pp.168-169)
「情報共産主義」という視点が面白い。しかし、実際には表向きは共産主義的風潮かもしれないが、裏側はすべて拝金主義的風潮につながっている。著者もそのような部分はきちんと指摘している。
図らずも同じ山本氏がYahoo!個人にて「スマホアプリ市場でパクリが横行していて凄いことになっています」というエントリを書いており、こんな一節で締めくくっている。
なお、一部のパクリ専門業者を追いかけていくと、振り込め詐欺で一世を風靡した集団に属する人物が取締役を務められ、株主に黒紳士が混ざっているようでもあります。もうこの辺は然るべき捜査機関がしっかりと追いかけて浄化作戦をやらないといけないんだろうなと思うわけですけれども、どうでしょう。
黒紳士ではないと思うが、2ちゃんねるまとめブログなども個人ではなく業者が入っているところが多いというのはよく言われる話。そうなると話はややこしい。
他人のコンテンツをそのまま使ってマネタイズにつなげるという手法は、ネット特有のモデルと言っていいと思う。ある面では大事にしていかなければならない文化なのかもしれないが、法的にもグレーな状態が続くとネット全体が収縮していくことにならないだろうか。コンテンツを転載する側が大きくなりすぎて、そのコンテンツ供給側の首を締めて全滅すれば、まとめブログだって立ち行かなくなってしまう。
とはいえ、2ちゃんねるまとめブログのようなネット文化は持続してほしいとも思っており、何かいい形での落とし所のようなものはないのかなあと考えるが答えは簡単に出せそうもない。難しい。